阪神タイガースの正体 (ちくま文庫)

阪神タイガースの正体 (ちくま文庫)
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「阪神タイガース」が象徴するもの

『阪神タイガースの正体』という題名ですが、阪神タイガースを中心にプロ野球を巡る球界・財界・マスコミ界の興亡の歴史を辿る好著と思います。「阪神タイガース」が象徴する「反体制」「反権力」というイメージが確立する迄にどのようなドラマが表裏に渡って展開されてきたのかを、膨大な資料から読み解いていく様子は文化史研究者としての力量を感じさせます。著者の井上先生は熱狂的な阪神ファンとのことですが、この本の初版が2001年4月という低迷期中だったこともあり、後半の筆致が悲壮感を帯びてくるのが印象的でした。もっとも「夜明け前が一番暗い」という名言通り「強い阪神」が復活した後に書かれた「文庫版あとがき」(2008年)では力強い筆致に戻っていますが。ちなみに小生はジャイアンツファンですが、好敵手として阪神には強くあって欲しいというのが偽らざる思いであります。

独特の哀感で魔性の輝きを放った「昭和の阪神」を振り返る

本のタイトルや装丁の印象からお気楽な阪神ネタのエッセイかと思いきや、タイガースの球団史及び日本プロ野球黎明期の真実が、綺麗事でなくリアルに書き綴られた骨太な本であった。創設時は読売戦より阪急との定期戦の方が重視されていたことや、「大の大人が野球で生計を立てるなんて」とプロ野球を蔑む時代の空気、二リーグ分裂時に阪急・南海を土壇場で裏切り読売にすり寄った経緯、読売戦以外は閑古鳥が鳴いた昭和三十年代等、阪神ファン歴40年の私も詳しく知らなかった事実が、豊富な文献の引用を基に語られる。 特にV9読売に敢然と挑んでは打ち砕かれ、その哀感が故に魔性の輝きを放っていた昭和40年代の阪神を語る下りは、同時代の空気を共有した者同士として、随所で「そやっ!」と相槌を打ちたくなった。また神戸のU局サンテレビや、当時の阪神ファンの「教祖的存在」だった中村鋭一が果たした役割にも触れるなど、随所に目配りが利いている。

優雅で感傷的な阪神タイガース

 本書は決して淡く儚い妄想によって暗黒時代を凌ぎ切ったトラキチの独白の類ではないし、 球団史を彩る数多のスターたちをめぐるエピソード集でもない。 「どうして、阪神幻想が関西のメディアで、それだけ肥大したのだろう」。そうした筆者の 問題意識に従って、広範な資料をもとに、極めて緻密かつシリアスに阪神なる球団の歴史が 繙かれていく。  現在なおも続くアマチュア信仰の鬼子として産み落とされた戦前のプロ野球。2リーグ制 導入に際しての阪神による裏切り、読売への追従。1962年、優勝を決めた甲子園に鳴り響く 閑古鳥。阪神名物お家騒動とメディアの因縁。佳曲「六甲おろし」の来た道。村山実曰く、 「スーパー・ヒーロー巨人への助演者」としての阪神はいつしか笑いの種となり、そして 1985年の優勝へ――  本書は2001年に出版されたテキストを文庫化したもの。ここ数年の潮流を組み入れようと すれば、かなりニュアンスの変わったものとなろうことは想像に難くない。  最終章こそかなりタイガースに偏ったものとなってはいるが、そこに至るまでの記述は 戦前からの日本プロ野球史を詳らかに明かした書として秀逸。  阪神ファンのみならず、野球史に関心を寄せる人々に薦められる一冊。

かなり詳しい阪神タイガースの歴史本

 本書の特徴は、新聞や書籍などからの引用がたいへん多いことである。筆者の勝手な想像や根拠のない事柄などはほとんど書かれておらず、非常に信頼性の高い内容であると感じた。特に、2リーグ分裂時に、阪神はパ・リーグに所属するはずだったが、間際になって「寝返った」ことについては、とても詳細に書かれている。  阪神タイガースの歴史を知るための良書である。

おぼろげだったタイガースが鮮明に見えてきた

 タイガースは不思議な球団だ。勝てない時でも人気があり、なおかつファンは皆熱狂的に応援している。なぜか。私にとって一つの謎だった。 この本はその謎を可能な限り解き明かしてくれた。受動的なタイガース創設の流れ、その後の紆余曲折、裏切りと言われたセ・リーグへの参加、引立て役としての読売とのかかわり、そしてマスコミやお笑いに翻弄されて... タイガースは結局、親会社阪神の一貫した「ビジョンのなさ」のために曲がりくねった道を歩まされたのではないだろうか。しかし、ビジョンを押しつけられなかったファンはタイガースを自由にイメージすることが出来る。すなわちタイガースをどうとらえてもよいのだ。弱くてもいい。笑われてもいい。夢でもいいから優勝すればそんなに幸せなことはない。   この点においては、親会社から「史上最強打線」を用意され「優勝を義務づけられた」某チームと明らかに対峙する。タイガースは結果的に親会社ではなくファンの「皆様」が楽しむものなのかもしれない。そう、タイガースは阪神電鉄のものではなく、我々みんなのものなのだ。

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