
- 井上 章一
- 筑摩書房
独特の哀感で魔性の輝きを放った「昭和の阪神」を振り返る
本のタイトルや装丁の印象からお気楽な阪神ネタのエッセイかと思いきや、タイガースの球団史及び日本プロ野球黎明期の真実が、綺麗事でなくリアルに書き綴られた骨太な本であった。創設時は読売戦より阪急との定期戦の方が重視されていたことや、「大の大人が野球で生計を立てるなんて」とプロ野球を蔑む時代の空気、二リーグ分裂時に阪急・南海を土壇場で裏切り読売にすり寄った経緯、読売戦以外は閑古鳥が鳴いた昭和三十年代等、阪神ファン歴40年の私も詳しく知らなかった事実が、豊富な文献の引用を基に語られる。 特にV9読売に敢然と挑んでは打ち砕かれ、その哀感が故に魔性の輝きを放っていた昭和40年代の阪神を語る下りは、同時代の空気を共有した者同士として、随所で「そやっ!」と相槌を打ちたくなった。また神戸のU局サンテレビや、当時の阪神ファンの「教祖的存在」だった中村鋭一が果たした役割にも触れるなど、随所に目配りが利いている。
優雅で感傷的な阪神タイガース
本書は決して淡く儚い妄想によって暗黒時代を凌ぎ切ったトラキチの独白の類ではないし、 球団史を彩る数多のスターたちをめぐるエピソード集でもない。 「どうして、阪神幻想が関西のメディアで、それだけ肥大したのだろう」。そうした筆者の 問題意識に従って、広範な資料をもとに、極めて緻密かつシリアスに阪神なる球団の歴史が 繙かれていく。 現在なおも続くアマチュア信仰の鬼子として産み落とされた戦前のプロ野球。2リーグ制 導入に際しての阪神による裏切り、読売への追従。1962年、優勝を決めた甲子園に鳴り響く 閑古鳥。阪神名物お家騒動とメディアの因縁。佳曲「六甲おろし」の来た道。村山実曰く、 「スーパー・ヒーロー巨人への助演者」としての阪神はいつしか笑いの種となり、そして 1985年の優勝へ―― 本書は2001年に出版されたテキストを文庫化したもの。ここ数年の潮流を組み入れようと すれば、かなりニュアンスの変わったものとなろうことは想像に難くない。 最終章こそかなりタイガースに偏ったものとなってはいるが、そこに至るまでの記述は 戦前からの日本プロ野球史を詳らかに明かした書として秀逸。 阪神ファンのみならず、野球史に関心を寄せる人々に薦められる一冊。
かなり詳しい阪神タイガースの歴史本
本書の特徴は、新聞や書籍などからの引用がたいへん多いことである。筆者の勝手な想像や根拠のない事柄などはほとんど書かれておらず、非常に信頼性の高い内容であると感じた。特に、2リーグ分裂時に、阪神はパ・リーグに所属するはずだったが、間際になって「寝返った」ことについては、とても詳細に書かれている。 阪神タイガースの歴史を知るための良書である。
- 阪神タイガースファン名言珍言集
- 猛虎魂会 / 中経出版
- 「阪神ファン式」人生の法則―感動が成功を生む
- 國定 浩一 / ティー・オーエンタテインメント
- あぁ、阪神タイガース―負ける理由、勝つ理由 (角川oneテーマ21)
- 野村 克也 / 角川書店
- 虎暮らし 自称阪神タイガース評論家の日記
- 鳴尾浜 トラオ / ochichan / 扶桑社
- 覚悟のすすめ (角川oneテーマ21 A 87)
- 金本 知憲 / 角川グループパブリッシング
- 頑固力―ブレないリーダー哲学 (角川SSC新書)
- 岡田 彰布 / 角川SSコミュニケーションズ
- パンツが見える。―羞恥心の現代史 (朝日選書)
- 井上 章一 / 朝日新聞社
- プロ野球の一流たち (講談社現代新書 1941)
- 二宮 清純 / 講談社
- 阪神タイガース (新潮新書)
- 吉田 義男 / 新潮社
- 愛の空間 (角川選書)
- 井上 章一 / 角川書店